小売電気事業者にとって、容量拠出金の負担額を正確に把握し、事業計画に落とし込むことは急務です。
広域機関(電力広域的運営推進機関/OCCTO)が公表している算定式は複雑ですが、その本質は「国全体の総コストを、各事業者のピーク時シェアで割り勘する」というシンプルな構造です。
本記事では、実務担当者が知っておくべき計算ロジックの要点と、コスト削減のための「変数」のコントロール方法について解説します。
容量拠出金の請求額は、以下の要素で構成されています。
【負担額 = ①容量確保拠出金単価 × ②容量拠出金算定基礎需要】
容量拠出金算定基礎需要は、各供給エリアにおける最大需要時の実績(H3需要等)を基に算定されます。
①の「容量確保拠出金単価」は、全国の容量市場オークションの結果や広域機関の調整によって決まるため、一事業者の努力で直接変更することはできません。
したがって、小売電気事業者が負担額をコントロールするために注目すべき変数は、②の「容量拠出金算定基礎需要」となります。
これは、小売電気事業者ごとの需要実績を元に算定されるため、負担額に影響を与えうる実務上重要な変数です。
この算定基礎需要は、各供給エリアにおいて電力供給が最もひっ迫した時間帯、すなわち月間の需要実績が最大となった上位3時間(いわゆるH3需要など)をもとにして算定されます。
制度開始から数年間は古い発電所への支払いを抑える「経過措置」が適用されており、現時点での実際の拠出金単価は、容量市場オークションの約定価格から一定額が差し引かれた水準となっています。しかし、この経過措置は将来的に縮小・終了が見込まれており、中長期的には容量拠出金負担(コスト増)を前提とした備えが不可欠です。
H3需要とは、単なる最大デマンド値ではありません。
各供給エリアにおいて、月間の需要実績が最大となった上位3時間(1日につき1時間まで、それぞれ別日の合計3日間)における需要実績の平均値を指します。
エリア全体の電力が最もひっ迫した「上位3つの時間帯」に、需要家がどれだけ電気を使っていたかのシェアによって、翌々年度の拠出金負担額が決定づけられます。
平均的な使用量(kWh)が少なくても、この「ピーク上位3時間」の使用量が多い(負荷率が低い)需要家を多く抱えている場合、拠出金の負担は重くなります。
容量市場のメインオークションにおける約定価格は、エリアや年度により異なりますが、概ね1kWあたり数千円〜1万円強がレンジです。
2024年から2025年に一度下がったものの、そこから2029年までは著しく増えていく想定となっています。
例えば、ある工場がエリアピーク時において、500kW規模の需要を有している場合、その1社の需要実績が算定基準需要に反映され、結果として年間数百万円規模の原価増につながる可能性があります。
小売電気事業者は、このコストを自社で吸収するか、託送料金のように需要家へ転嫁するかを判断しなければなりません。
需要家への転嫁を検討する際、「電気料金単価(円/kWh)に直すといくらか」という視点が重要です。
需要家の負荷率(Load Factor)によって変動しますが、一般的な需要家を想定した場合は、1.5円〜3円/kWh程度の影響が出ると予測されています。
ただし、ピーク時の使用比率が特に高い需要家の場合、4円/kWhを超えるインパクトになるリスクもあり、注意が必要です。
計算式から明らかなように、容量拠出金負担を抑えるためには、「エリアピーク時の自社需要を低減し、算定基礎需要への影響を抑えること」です。
これを実現するのに有効な手段の1つが、デマンドレスポンス(DR)の活用です。
容量拠出金対策としてのデマンドレスポンス(DR)は、実施するタイミングが重要です。
広域機関が公表する需給見通しや気象予報データをもとに、エリア全体の需要が最も高まる可能性がある日時を予測し、その時間帯に合わせて需要家に節電要請を行います。
このようにエリアピーク時の需要実績を抑制することで、容量拠出金算定基礎需要への影響を低減することが可能になります。
小売電気事業者がデマンドレスポンスを実施するにはシステム整備や人材確保などの課題がありますが、これらはデマンドレスポンス支援サービスを活用することで解消可能。
デマンドレスポンス支援サービスでは、制度対応・制御支援・報酬設定などをトータルでサポートしてくれるため、ノウハウや人材が不足している小売電気事業者でも、安心して取り組めるようになります。
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