2024年度より、将来の電力供給力を取引する「容量市場」の実運用が始まり、小売電気事業者に対して、新たなコストである「容量拠出金」の支払いが義務付けられました。
経過措置が適用されている期間は、小売電気事業者の負担は一定程度緩和されています。しかし、この緩和措置は段階的に縮小していくため、中長期的なコスト増への備えが不可欠です。
多くの小売電気事業者にとって、電源調達コストの構造が変わり、収益モデルや料金プランの見直しを迫られる重大な転換点になっています。
本記事では、制度の基礎知識から、負担額が決まる複雑なメカニズム、そして事業者が取るべき具体的な対策について解説します。
容量市場とは、将来の日本全体の電力供給力(kW)を確保するための市場です。
これまでの卸電力市場(JEPXなど)は、実際に発電された電気の量(kWh)を取引していましたが、再生可能エネルギーの拡大等により、稼働率の低い火力発電所の維持が困難になり、需給ひっ迫のリスクが高まってきました。
そこで、4年後の供給力をあらかじめオークションで募集し、発電所を維持するための固定費を支払う仕組みが導入されました。「電気という商品(kWh)」だけでなく「発電できる能力(kW)」に対しても対価が発生するようになったのが特徴です。
容量市場で発電事業者に支払われる「容量確保契約金額」の原資となるのが、小売電気事業者が広域機関(OCCTO)へ支払う「容量拠出金」です。
この金額は一律ではなく、各小売電気事業者の「ピーク時の需要シェア」に応じて配分されます。ここで重要になる指標が「容量拠出金算定基礎需要(H3需要)」です。
H3需要とは、当該エリアの月間最大需要が発生した上位3日の最大電力(各日1時間、合計3時間)における需要実績の平均値を指します。
「日本中で電気が足りない時間帯」に、どれだけ電気を使っている需要家を抱えているかによって、小売電気事業者の負担額が変わります。平均的な使用量(kWh)が少なくても、ピーク時(kW)の使用が多い需要家が多い場合、想定以上の拠出金請求が届くリスクがあります。
容量拠出金は「固定費」として諦めるべきものではありません。経営へのインパクトを最小化するために、以下の2軸での対策が必須となります。
容量拠出金は、電気の安定供給を維持するためのコストであり、最終的には需要家が負担すべきものという考え方が基本です。
しかし、既存の契約単価にそのまま上乗せする場合、契約変更に伴う手続きや説明責任が発生してしまいます。
H3需要とは、全国の容量拠出金をエリアごとに配分するための基準指標であり、需要家単位で直接算定されるものではありません。
各事業者が需要家ごとの負担を把握する際には、夏季・冬季の需要月におけるピーク実績(各月1時間、年間6時間)が参照されますが、実際の計算では事業規模や月別補正が加わる点に留意が必要です。
これらを踏まえた本質的な対策は、エリア全体の需要がピークとなる時間帯の需要を抑制することです。
容量拠出金は、エリア全体のH3需要に対する自社の需要シェアを基に算定されるため、ピーク需要を抑制することができれば、中長期的に拠出金負担を抑える方向に働きます。
具体的には、需給ひっ迫が予想されるタイミングで需要家に節電を依頼する「デマンドレスポンス(DR)」を実施。需要家に対して「ピーク時に節電協力すればインセンティブを支払う」という契約を結ぶことで、小売電気事業者は拠出金負担の抑制につなげることができ、需要家は報酬を得るという「Win-Win」の関係を構築できます。
特に、産業用蓄電池や自家発電設備を保有する需要家へのDR提案は、実効性の高いコスト抑制策となります。
小売電気事業者がデマンドレスポンスを実施するにはシステム整備や人材確保などの課題がありますが、これらはデマンドレスポンス支援サービスを活用することで解消可能。
デマンドレスポンス支援サービスでは、制度対応・制御支援・報酬設定などをトータルでサポートしてくれるため、ノウハウや人材が不足している小売電気事業者でも、安心して取り組めるようになります。
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